人と違うランドセルが結んだ友情

私のランドセルは、所謂女の子のランドセル! という感じの真っ赤なものではなく、大人びたワインレッドのものでした。私の希望で選んだ色ではなく、真っ赤は嫌だ、という母の希望でその色のものを背負っていましたが、素敵な色だと思っていました。赤や黒以外の色の子も少しはいましたが、今ほどカラーバリエーション溢れなかった当時、その色は少しだけ浮いていました。実際、幼い子どもは自分と違うものを避けるものですから、難癖をつけてくる子もいました。

人と違うランドセルが結んだ友情

そういう時は少し怒り、なんで母は真っ赤ではなくこの色を希望したんだろう……と文句を言いたい気分でした。ですが、いいこともきちんと起こりました。ある日、ひらがなの書き取りが苦手だった私は居残り勉強をしました。真面目に授業を聞いても追いつけず、みんなと一緒に遊べないことが嫌でした。早く帰りたい、もう投げ出したい――勉強が退屈な子供らしい気持ちが溢れていました。そんな退屈な時間が終わった時、一緒に居残りをした子に声をかけられました。その子は背が低く、反対に私は背が高かったので、ほとんどお話もしたことない子でした。もしかして、私のことを馬鹿にするんじゃないか、と不安でしたが、彼女は声をかけてくるのと同時に、自分のランドセルを指さし、次に私のそれを指さしました。よく、彼女のランドセルを見ると、可愛らしいピンク色でした。ほとんど彼女と関わりのなかった私は「そういえば、ピンク色のランドセルの子がいたな。この子だったんだ」とだけ思いました。が、彼女は「私もランドセル文句言われたの。でも、あなたのも私のも綺麗だし、みんなとなんも違わないよね」と笑顔で話します。文句を言われたのに、私のランドセルも、自分のランドセルも肯定してきます。そのとき、私はこのランドセルをまた好きになりました。そして、それ以降彼女と話すようになりました。今では様々な色のランドセルをよく見かけます。が、ピンクとワインレッドを見かけると、この時のことを思い出してしまいます。